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投稿実験レポートNo.211-4
古代の神々の残した遺跡を探索してみよう!



投稿文章

●はじめに
  • 私の生活する島は、太平洋に散らばる小さな島々のうちの一つです。
  • この実験(?)の発表の趣旨は『世界にはまだまだいろいろな不思議が眠っていて、ちょっとした好奇心さえあれば、それに触れることができるんだ・・・(事の良し悪しは別として)』って事と、「ちょっと人に言ってみたかった。」って事です。
  • そんなわけで、この静かな島に観光や、開発や調査の手を入れさせたい、ッて訳じゃ決してないので、詳しい地名は伏せている事をはじめにご了承ください。
  • いつものように、以下の記録は100%ノーフィクションです。


●神話の時代
 遥かなる太古の昔。この島の大気がもっと濃く甘く、そして汚れていなかった頃。
 国の名前等つく以前のこの島々は、巨神たちの国であった。
 『カロブー』と呼ばれるその巨神達はその大いなる力で大地を治め、空を翔け、海を泳いでいた。
 彼らは島のいたる所に住み、島の覇権をめぐり争いあった。
 その度に、大地は裂け、海は震えたという。
(この国の古い伝承より)


●探求の始まり
 僕がその話を耳にしたのは2002年の第1日目、町から内陸に入り込んだある村に、友人に招かれて足を運んだ時のことだった。
 その村は以前は耳にしたこともないような小さな村だった。
 しかしこの村は、あるひとつの伝説を持ち、『神に護られた村』、と呼ばれていることを、僕は知ることになる。
 その根拠は村の中央の小さなメモリアルに刻まれていた。

 1917年、この国全土を致死性の非常に高い伝染性の疫病が襲った。
 毎日、国中で多くの人が死んだ。村々から聞こえる泣き声は絶えることはなく、墓地へ続く埋葬の行列は途切れることがなかった。
 しかし、この国で海を隔てた一つの離島と、この村だけがその期間、奇跡的に一人の死者も出すことなく病の時を乗り越えた。

 村の老人によくよく話を聞くと、神といっても、いわゆる『ジーザス(キリストさんの事ね)』ではない。
 この国の土着神とでも言おうか、日本で言えば、『ヤオロズの神々』のような、古代の神の伝説を、老人はポツリポツリと片言の英語で話し始めた。


●神々の石舟伝説
 『ラマスィカウ』
 これはこの地域を治めていた巨神の名だ。
 彼はS湾(美しい曲線の天然良質港)を我が物にしたかった。そのため、地底から巨石を引き上げ、それを削って巨大な石舟を作り上げた。
 次に彼は、大地を割り、S湾に続く長い道を作った。
 しかし、彼の近くには二人の気位の高い女神たちが住んでいた。
 それを知った女神達は怒り狂い、彼を襲った。
 ラマスィカウは慌てて空を駆けロマナスバスバ山(この村を見下ろす大きな山:仮名)へ逃げ込んだ。
 怒りの女神たちはその足で船を蹴りつけた。
 このため、石船は曲がり、その破片はあたりに散らばった。
 女神たちの怒りは収まらず、その爪で大地を引き裂き、彼の作った道の流れを変えてしまった。

 このため、その地割れは川となり、N湾に流れ込んでいる。現在S湾へは地割れの跡を残すのみである。
 こうして、今でも村の到る所には巨石が点在し、この山の何処かに、ラマスィカウが作った石舟が眠っているという。


●そして探索へ…
 僕はその話を聞いて居ても立ってもいられなくなった。
 なんとしてもその石舟を見たい、触れたい、伝説を肌で感じたいと思った。
 そこで村人に案内を頼んだが、今日は日が悪いとか(まあ正月だったし…)、足場が良くないとかで余りそこに近づきたがらなかった。
 だったら一人で行く、というと「帰れなくなるぞ」「次回にしろ」と止めにかかる。
 まあお年寄り達だから、自分たちの伝説の地にあまりよそ者を入れたくないのかもしれないな。そう思い、そこは諦めた振りをして、後でこっそり一人山に入った。

 亜熱帯の森は、まるでそこだけ太古の大気を留めているかのように、ねっとりと肌に絡みついた。
 今にも消えそうになる獣道を、老人の話を頼りに進む。
 どこかで「ホウ、ホホウ」と得体の知れない声がし、ガサガサと森の割れる音がする。
 この国にサルが居たっけ?、そんなことを思いながら、倒木を越え、泥濘を渡った。
 誰かに見られているような、妙な感じと、なぜか頭がちりちり痛んだ。

 どれくらい歩いたろう、ある自然の広場のような所で、僕は足を止めた。
 そこで、ぱったり、とその獣道は途切れていた。
 僕は、引き返さざるを得なかった…。


●二度目の挑戦
巨石
家の周りには巨石が点在する
 悔しかった
 どうしても諦め切らなかった僕は、次にビールとタバコを持って村の若者を訪ねた。
 色々話す内に、彼らのうちの2人が道案内を承諾してくれた。

 僕は再び森に足を踏み入れた。
 森の中を裸足の彼らは縫うように歩く。山歩きに慣れている僕でも付いて行くのがやっとだ。
 が、突然彼らは立ち止まった。
 僕が「早く進めよ。と急かすと、彼らはココがそうだという。
 どこにも船なんか見えない。あるのはこんもりとした小山だけだ。

 「どこやねん?!」と僕が聞くと、彼らはその小山の草を取り払い、周りの木を引き倒し始めた。
 そのパワフルさに圧倒されるうちに、やがてソレは僕たちの前にその姿を現わした。


●伝説との対面
 それは、船というにはあまりに武骨で、巨大だった。
 大男のローカルが二人掛りで汗だくになったのに、やっと姿をあらわしたのは舳先のホンの一部だけだった。
 そこには何かで磨耗したかの様な小さな突起がいくつもあった。
 それは船というより巨大な獣の下顎の骨を連想させた。

 とても人間の力で運べそうもない、ましてや水に浮きなど絶対しないその『船』は、言い知れぬ雰囲気を醸し出していた。
 どれくらい昔からあるんだ?、と僕が聞くと、彼らは首をかしげて何千年も昔じゃないか?、と顔を見合わせてつぶやいた。
 おそらく、僕はここの到達した初めての日本人だったろう。

 しかし、感慨に酔いしれる余裕はなかった。
 長い時間の間に何時いつしか石舟は大顎山蟻(仮)の住処となっていたようで、巣を壊された彼らは、僕らに襲い掛かってきたのだった。
 彼らは、赤黒いツヤっぽい体と、非常に発達した牙を持っており、噛み鳴らす音が警戒音として耳に届くくらいである。しかも今回噛まれて始めて分かったが、どうやら軽い毒も持っているようだ。
 只でさえ痛いのが持続するのだ。そんなのが、カチカチ警戒音を鳴らしながらワラワラと足を這い上がってくる。
 たまらず、「いて!いたた!!いったあああぁぁ!!!。」と叫ぶと彼らは笑ってビールを飲み始めた。
 体に既に毒に対する耐性が出来ているのだろうか?。僕は自分が文明人であることをはじめて知らされる想いだった。

ローカル
伝説の石舟に腰をおろすローカル
 彼らをかし、何とか森を抜け出す。
 僕があまり痛そうにしていると、彼らは山辺の湧き水に案内してくれた。

 これを飲んでいると病気をしないんだ、と彼らは誇らしげに言う。
 僕は、村の記念碑を思い出し、彼らに聞いてみた。するとやはりこの水はあの石舟の方から湧いてくるのだと彼らは信じていた。
 『神に護られし村』か…あながち出鱈目ではないのかもしれないな、ふとそんな気がした。


●後日談
 後日ある地元の友人が、こっそり僕のオフィスにきて忠告してくれた。
 彼曰く、未だにこの国には古代神信仰が息づいており、それに伴うブラックマジック(黒魔術)が固く信じられている。

 キリスト教伝来後、古代神信仰は邪教、悪魔信仰とされタブー化していった。しかし、現在にいたっても、密かに御神体を崇めたり、小動物を生贄に捧げている集団がいるというのだった。
 彼らは表向きは教会の信徒であるが、裏では同じ古代神を崇める各地の隠れ信奉者集団と交流しているのだという。
 中でも有名なのは『海の神:大鮫神』信仰等で、『ラマスィカウ信仰』もそのひとつにあたるという。
 僕は笑ってしまった、すると彼は真顔で心配し、あまり嗅ぎ回らない様に忠告した。彼は本気でそれらの組織の使うという黒魔術を恐れている様だった。
 僕にはそんな組織があるとはとても信じられなかったが、村の老人の言葉が頭をよぎった。

 「ラマスィカウには、ほかにも支配する村があり、そこには秘密の言葉、その村にだけ伝わる言葉がある。また、彼には妻が居り、その女神はソロモンを支配する強い魔女だった。だから、我々はその限られた村と、ソロモン島とは、シェイクハンドなんだ。」

 僕の英語力も曖昧で、彼も現地語交じりのブロークンイングリッシュだったので事の真偽は定かではない。
 しかし、いまだに、現在のこの国には古代神を密かに崇める集団があるのは確かな様だ。
巨石
舳先には磨耗したような突起が並ぶ
 しかし、僕の想像するラマスィカウはそんな、おどろおどろしい黒魔術信仰には繋がらない。
 ひょっとして、彼は奥さんに会いに行くために船を作ったんじゃないだろうか、その不器用な船を、ヒステリックな女神たちに壊されてしまい、慌てて山に逃げ込む気のいい大男を想い、つい楽しい気分になってしまう。

 事の真相は、まさに神のみぞ知る、だ。だが、今もなお、村には巨石が群れをなし、川はとうとうとN湾に注ぎ、神々の石舟は山の中で静かに眠り続けている…。
 そんなロマンと冒険がいまだに生きて語り掛けてくるこの島は、ある意味本当の秘境なのかも知れない。


●結論
 人は、ほんの一握りの好奇心と行動力があれば、いろんな不思議に出会える可能性を秘めている。
 当たり前の日常、いつもの生活の中にも、きっと不思議は眠っていて、発見される日を待っているはず・・・。
 『当たり前』で頭にフタをする前に『実験』してみるのもいいかもね。って感じかな・・・。


管理者の意見,感想

 実験するのはいいけど、私は汚水をかぶるかどうか迷ったり、死を覚悟して船に乗ったりするよか、日本で暮らす生活の方を選びたいんですが‥‥。

by 神楽坂博


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