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投稿実験レポートNo.122
ストーカーを逆ストーキングしよう!




投稿文章

●序章
 今から5年前、ある日の登校中(当時私は高校生)
 いつものように学校の最寄り駅で電車から降りた私の後を、二十歳はたち前後のひとりの男性がこちらにチラチラと視線を送りながら、つかず離れず歩いていた。
 何となく不安になり、さりげなく足早にホームの階段を昇る私。
 あからさまに早足になる男性。
 次第に歩く速度を上げながら改札を抜け、駅を出る頃には、私はもう完全に疾走モードであった。
 しかし男も負けじと駆け出し、ついに追いついて私の前に立ちはだかった
 ぴーんち!

 しかし、何をトチ狂ったのか男は私に交際を申し込んできたのである。
 おたおたと、しかしやんわりきっぱり辞退させていただいた私だったが、それをきっかけに(なのか元からそういう趣味がおありだったのかはわからないが)男は道を踏み外してしまうのであった
 ご愁傷様

 それからというもの、ホームで待ち伏せされる(声を掛けたりするわけではなく、ただ待っている、車内ではジトジトとした視線が送られるニヤつかれる、などなどの日々が始まった。
 直接何かされているわけではないが、あまり気持ちのいいものでもない。
 当時(1996年)はまだ『ストーカー』という言葉・現象がそれほどメジャーではなかったせいもあって、警察に相談しても、

「それじゃ、何かあったらまた来て下さい」
の一点張り(何かあってからでは遅いんだが…)
 仕方がないので、登校時刻を微妙に変えてみる、乗り込む車両を変えてみる、男連れで登校、などを試みたものの変化は見られず。

 …ええい、こうなったらせめて自力で男の身元を明かしてやるまでだ!
 毎朝規則正しく私服でストーキングに励む男のことだ、所属している大学・予備校くらいなら簡単に調べられるはず。
 やってやろうじゃん!


●用意する物
  • 登校中の私
  • それをストーキングする男(現地調達)
  • さらにそれをこっそりストーキングする調査員


●実験1(1人で追跡)
 というわけで、ある朝。
 こっそりと調査員(先輩、大学生の男性)をホームに忍ばせ、いつものように男ともども電車に乗り込んだ。 いつもの駅で下車し、学校に向かう私。
 そのまま電車に揺られていく調査員。期待と不安を胸に待つこと数時間、調査員からの報告があがってきた。
「駅を降りるとこまでは順調に尾行出来たんですけど…奴、その後ずっとコンビニで立ち読みしてたんですよ…。
 オレも用事あったし、いつまでも張ってるワケにはいかなかったし…。」
 …お疲れさまでした。
 きっと、張ってる途中で我に返って、
「(オレ、何やってるんだろ…)」
 という気分になったんだろうなぁ、などと勝手な想像をしつつ、とりあえず今回はここで終了。
 しかし、男のその行動は、尾行に気づいたゆえの行動なのか、それともこれが素の日常なのか‥‥。

深まる謎、…次回に続く!


●実験2(続・1人で追跡)
 あれから数日。
 相変わらずストーカーとの静かな緊張関係の日々を送る私の元に、話を聞きつけた調査員2(やはり先輩…浪人生の男性)が、
「僕やってみましょうか?」
と持ちかけてきた。
 そうこなくっちゃ!

 そして数日後。
 駅のホームには再び、私・男・調査員2の姿があった。
 前回同様電車に乗り込む3人、それぞれの思惑をのせて動き出す電車、程なく学校の最寄り駅で下車する私。
 …数時間後、調査員2からの報告が上がってきた。

 「すんません!途中の駅で巻かれちゃいました!」
 …だめじゃん!!
 かくなる上は、私自ら乗り出すしかのう
 …ふっ…ふふふっ…

もう誰も止められない、…次回に続く!


●実験3(集団で追跡)
 そんなこんなで迎えたとある休日。
 たしか第2土曜日で学校が休みだったか、定期テスト開け休みだったか、創立記念日だったかのように記憶している。
 いつもの駅、いつもの時刻に、いつもの私…に加え、なぜか10名ほどの調査員軍団の姿があった
 …前日に部室で有志を募ったところ(さすがに単身でストーカーを追いかけ回すほどの勇気はなかった)
 「物好きな男を是非一目見てみたい!」
 「なんか知らんが面白そうだから私も行く!」
 「もちろん何かあったら速攻逃げるけど!」
 等々の心温まる人情(?)により、気が付いたら大所帯が出来上がっていたのだ
 つーかヒマね、みんな。

 とはいえ、このままではあまりに目立つので、私+2,3名(以降『調査隊A』とする)と、その他大勢(以降『調査隊B』とする)とに集団を二分割し、調査隊Bは他人を装いながら調査隊Aの隣の車両に乗り込むことになった。
 そしてホームに男登場。
 電車に乗り込む一同、素知らぬ顔で動き出す電車。
 絶えず私から半径1〜2mほどのポジショニングを心がける男と、

「(へぇ、あの人ですかぁ…)」
「(いかにも理系ですって感じだよね…)」
「(鞄が調査員2さんと同じだね。関係ないけど…)」
 などボソボソと情報をやりとり(?)する調査隊A。
 そこに隣の車両に乗り込んでいた調査隊Bが、全員がチラチラと男に視線を注ぎつつ隣の車両から移動、調査隊Aと合流した。
 さすがに不審に思ったのか、車内を徐々に移動し始める男
 後を追う調査隊B
 停車する電車。
 下車して走り出す男!
 追いかける調査隊B!!

 約30分後。
「くそ…見失った!
「ラッシュ時だもん、仕方ないよ…」
「ええい、逃げ足の早いヤツめ!」
「お疲れでした〜」
 …またもや男を逃してしまった調査隊であった。
「…あれ?ところで、T(=調査隊Bの1人)は?」
「え?お前一緒じゃなかったっけ?」
「知らねーよ、はぐれて家帰ったんじゃね?」
「それよりこれからどうするよ?」
「せっかくだからこのまま電車でどこか行こっか」
「私トランプ持ってきましたよ〜」
 …わきゃわきゃ

 そうして残りの休日をエンジョイすることになった調査隊であった。


 しかし話はこれで終わらない
 翌日。

みんなひどいよ〜。
 俺、最後まで追いかけてったのに…
 T君はあの後、独りで男を追跡、ついには男が某W大学関係者であることを突き止めたのであった。
 大手柄である!。
 君の存在を完全に忘れ去って休日を楽しんでいた私と調査隊を、どうか許してやってほしい。

 こうして男の所属は割れたものの、以降それ以上の追跡を行うこともなく(妙な達成感を得て、もうどうでもよくなってしまった、男も懲りることなくストーキングを続け、やがて私の卒業に伴って全てが闇に葬り去られたのであった。
 後日談として、翌年某W大学を受験したT君はその後2年ほど代ゼミの住人となるのであるが、とりあえず今回の話とは関係ない。
 と思う。たぶん。


●反省・結論
  • 集団追跡のとき、事前の打ち合わせが不十分だったため、「こっそり追跡する」はずが、「大々的に鑑賞した後追っかけ回す」という結果になってしまった。
  • しかし、ストーカーは集団に追いかけ回されたくらいではめげないらしい。
  • 世の中、物好きと暇人は結構いるもんだ


管理者の意見,感想

 んー、このストーカーさん、逆切れするタイプでなくてよかったねー。
 実際にストーカー被害に遭ったら辛そうだけど、でもなんだか文章に全然緊張感が無いところがGood!
 ストーカー被害で苦しんでる方々、逃げるばかりでなく、むしろこちらから攻める気持ちで犯人に立ち向かいましょう!

by 神楽坂博


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